畑の地力を高めるために、有機質肥料や堆肥が効果的です。しかし、土に養分を蓄えて畑の地力を高めるのは、それだけではありません。実は「草」も畑を肥やしているんです。草は野菜よりも早く育ち、栄養を吸い、野菜の育成を妨げる上に、カビや病害虫を介する厄介者として扱われています。その草が土中ではどうなっているかご存知ですか?
草が生き物を育て、土を育てる
草が生えている土地ほど、土が豊かになるんです。土が風で飛ばされることもなく、雨で流されてしまうこともない。湿り気もほどよく、地温の変化もカバーされます。そして、枯れた草の葉や根が土中の生き物にはエサとなり、多様な生き物の宝庫になるんです。もちろん害虫もいれば益虫もいます。
草が生えっぱなしで元気に育ちすぎては、養分が野菜に行かず困ってしまいますので、野菜の丈よりも小さくなるように上手に管理して共生することをお勧めします。草を刈ったらその場に敷けば、やがて分解されて養分になります。野菜の残渣も土に混入すれば分解されて養分になります。中でもマメ科の根には窒素固定菌がおり、土中に窒素を蓄えますので、肥料がなくても収穫が可能です。窒素成分が土中に残るので次の作付けのときにも役立ちます。
不耕起栽培という言葉を聞いたことがあるでしょうか。本来、耕さないほうが土中の生き物は増えていき土が肥えていきます。鍬や耕運機で耕さずに長年続けた畑では、肥料分を施さずに野菜をつくることができるそうです。
例えばミミズ。土が豊かな畑にはミミズがいると言われますが、耕すことで環境が激変し、多くのミミズは死んでしまいます。ちぎれてしまったり、温度差で干からびてしまったり、鳥や虫に見つかって捕食されてしまったり…。しかし、不耕起をつづけた豊かな畑なら、1㎡数百匹のミミズが済んでいると言われているので、最大で年間約1cmの厚さふんが新しい土が出来上がります。年々、肥えていく畑になります。
土も植物も育てる草マルチ
草を上手に使うと、畑の生き物が増えて畑が豊かになっていきます。草の活用法として簡単なのは草マルチ(有機物マルチ)です。刈った草を野菜の株元に敷いたり、畝間にしいたりするといいです。また空いている場所があれば、麦類などを育ててみてください。敷き藁として活用することができるのでとても便利です。
とはいえ、真夏は刈ってもどんどん生えてきてしまうので、畝に敷くにも限界が…という場合は、畑の一部に積み上げてしまってください。けっこうな山積みにしておいても秋冬には分解が進み、新しい土が出来上がっています。
また、草マルチをするとビニールマルチに比べ地温の変化が激しくありません。断熱材の役割も果たすので、カンカン照りでも土の表面は涼しくて湿り気があり、厳しい冬の寒さでも凍ることがありません。温度変化が少ないということは、作物の根や土中の微生物が育ちやすい環境が整えられているんです。
とくに雨が降ると畝土が流れ出てしまいますが、草マルチがあると、雨水がマルチの間を伝って流れるので、適度な量が土に沁み込みます。激しい雨が降ったときでも、土が打ち付けられて団粒構造が壊されることがありません。土が固くならないという利点もあり、適度な湿度も保てるというメリットがあります。
土壌病菌・害虫を防ぐ
雑草は病原菌を介在させると、慣行栽培ではよく言われます。しかし、草マルチをしておくことで、土の跳ね返りが少なく土が直接作物についたりしませんので、土壌病原菌の感染を防ぐことができるんです。さらに、草のしたに多種多様な虫や菌が増え始めます。害虫や病原菌の天敵も増えてきて野菜が育ちやすい環境ができあがります。